Wildbirds & Peacedrums/Heartcore CD
スウェーデン発!女性ボーカルと男性ドラムの異色編成デュオの鮮烈デビューアルバム 魅力的な男女デュオといえば、WHITE STRIPESを筆頭にROYAL TRUX、KILLS、QUASI、HIGH PLACES、BLOOD RED SHOESなどが思い浮かぶ。 1980年代の音楽ファンにはEurythmicsやTOM TOM CLUBなども、懐かしい男女デュオと呼べるかもしれない。
Wildbirds&Peacedrumsは未知の可能性を秘めた変幻自在の歌声を持つMariam Wallentinと、タイトにリズムをキープしながらボーカルに絡みつくAndreas Werliinのドラム2人組という、イレギュラーな編成がこのバンドのユニークなところだ。彼女たちの、この上なくシンプルで斬新なサウンドは地元スウェーデンで評判となり、07年にデビューし世界に羽ばたいた。
ジャズ、ブルース、ポップス、ガレージ、アヴァン、サイケデリック、インダストリアル、ポストロックなどなど様々なエッセンスを吸い込みながら、タイトにソリッドに連打される疾走感のあるナンバーがひしめく。ギターやベースがなくてもこれほどパワフルなのは、2人の作り出すサウンドが、これまで見たことも聞いたこともない化学反応を起こしているからなのだ。
先日の来日公演を見た人は特によくわかると思うが、ボーカルを務めるMariam嬢のルックスの美しさがパフォーマンスをさらに際立ったものにしている。ステージに立つのはMariam WallentinとAndreas Werliinの2人だけ。それなのに、美しいビジュアルと音が鳴り響くと、その心配はもう無用だ。もはや圧倒的な2人のパフォーマンスを見逃すことができす、リズムに合わせてただ凝視し続けるしかないのだ。
Wildbirds & Peacedrumsのプロフィールを簡単に紹介しよう。
ボーカルのMariam WallentinとドラマーのAndreas Werliinが母国スウェーデンで音楽活動を始めたのは04年。自ら限定でリリースしたCD-Rが注目を集め、07年には地元スウェーデンのレーベルFOUND YOUからファースト・アルバム『HEARTCORE』でデビューする。女性ボーカルとドラムというシンプルな編成の男女デュオの人気は、とどまることを知らず、 ファースト・アルバム『HEARTCORE』がPSAPP、MURCOF、CARIBOUなどでおなじみ、英国リーズの名門レーベルLEAFから08年にワールドワイドに再発され、一気にこの男女デュオの名前が世界中に轟いたのだ。
とにかく彼女たちのサウンドとパフォーマンスは、他に比べられるものがない。ドラムとパーカッションのみで作られるパワフルで重厚なサウンド。そこに力強く放たれる圧倒的にブルージーだが甘みもあるふくよかな歌声。こんなにシンプルな編成であるのに、2人の放つ世界は実にエモーショナルでメロディアス。
Andreasのドラムとパーカッションを駆使した細やかなリズムに乗って、Mariam嬢の歌声は自在に変化し、どこまでもシンプルなビートの旋律を華麗に跳ね回る。彼女の声は低くて太いのだが、声の太い女性シンガー特有のハスキーな印象はなく、むしろ可愛らしく奥行きと丸みがある。また声量も圧倒的だ。
彼女の声は少女のようなあどけなさを残しながらも、姉御のような迫力も兼ね備えており、曲に応じて歌声を使い分けているのが見事だ。これに彼女の美しいルックスが重なれば、怖いものはない。激しい曲は強烈な迫力で、やさしい曲はより繊細に見せてくれる。そんな彼女たちがブレイクするきっかけとなった、このデビューアルバムを聞かない理由はどこにもない。
text by 小池_弘
01. Pony
02. The way things go
03. Bird
04. I can’t tell in his eyes
05. Doubt / Hope
06. A story from a chair
07. The battle in water
08. The ones that should save me get me down
09. Lost love
10. The window
11. Nakina
12. We hold each other song