ワイルド・パーティー パンフレット

プレイメイトのお色気写真とラス・メイヤーの人生訓もたっぷり拝めるモンドデザインな一冊 正方形のページものと思ったら、なんとスリーブ仕様である。EPレコードのようなデザインで、スリーブの入口にゆるやかなカーブが施され中身が取り出しやすくなっている。その中にはレコードの代わりに濃い緑色一色で刷られたライナーノーツが16枚入っている。ミニシアター系の映画のパンフレットには、映画の雰囲気を誌面の中だけでなく形やつくりに現わしたものも少なくないが、このパンフレットはそうした変形もののひとつである。

配給会社ケイブルホーグ社のカルト・クラシック・シリーズとして1999年にリバイバルした『ワイルド・パーティ』。モンドな雰囲気漂うパンフレットの表紙には、本作が1970年にアメリカで公開されたときのポスター・イメージが使われている。下から女性たちを煽るカメラアングルは、ラス・メイヤー監督独特の撮り方で、第二次世界大戦の戦場カメラマンからプレイボーイ誌のカメラマンという天と地ほどの落差のある転職キャリアを経て培われたものだ。おのずとバストが強調される構図となっているが、このアングルでふたつのこんもりとした山が表れてこない女優は、ラス・メイヤー作品にはまず登場しないと言っていいだろう。

映画へのリコメンドとして掲載されているメイヤー自身のコメントが笑える。
「わしは間違いなく女性を搾取してきた、まぎれもないすけべじじいだ。それで生計をたて、熱意と趣味を注ぎ込んできた。わしゃポルノ屋じゃ—だがワンランク上のポルノ屋なんだ」

搾取や開拓を意味するエクスプロイテーションという映画のジャンルがある。ポルノ、ロックンロール、モンド、黒人映画、など限られたジャンルに特化し、おもにドライブイン・シアターのような場所で上映されるB級映画だが、そのなかでもセクスプロイテーションと言われるソフトコアポルノのジャンルを確立したのがラス・メイヤーだ。

メイヤー作品といえば、気性の強いお色気ムンムンの女性たちが主人公のハチャメチャなコメディ&バイオレンス。脚本・監督・撮影・編集までをひとりでこなす自主制作ながら確実に収益を得ており、そのような自負が先のコメントにも表れているのだろう。

『ワイルド・パーティ』はラス・メイヤーの初メジャー作品である。
パンフレットに寄稿している映画評論家、ウェイン町山のWEB上のレビューによると、「1960年代後半、ハリウッドのすべての映画会社が、テレビと、セックス&バイオレンスを売り物にするドライブイン映画に客を盗られて経営難に陥っていた」という。本作を製作した20世紀FOXもまた超大作『クレオパトラ』(68年)で失敗し莫大な赤字を抱えていた。そんなときに低予算で確実な儲けをとれる監督として白羽の矢を当てられたのがメイヤーだった。

かくして、『ワイルド・パーティ』はセクスプロイテーション映画でありながら、メジャーのスクリーンに堂々と上映されるという快挙を成し遂げる。後にピューリッツアー賞に輝く映画評論家のロジャー・エバートを脚本に招き、雑誌『プレイボーイ』のグラビアモデルであるプレイメイトを総出演させ、セックス、ドラッグ、ロックンロール、バイオレンス、ホモセクシャル、レズビアン……ありとあらゆる娯楽要素と、極めつけに1969年にビバリーヒルズで起こったシャロン・テート事件に酷似した猟奇的ラストシーンを盛り込んだのである。

パンフレットにはラス・メイヤー自身のインタビューも掲載されている。
「愛、レイプ、殺人、セックス、ドラッグ、中絶、自殺、全てがここにある。皆、何か身に覚えがあるだろう。心を閉ざしちゃいけない。生きるってこういう事なんだから。それが『ワイルド・パーティ』さ。官能の宴が人間の心に火をつけるんだ」

さすが戦争という地獄をくぐり抜けてきた男の言う言葉は違う。実際、映画は大ヒットし、さらにそれだけでは終わらず数々の映画作家——マイク・マイヤーズ、ジョン・ウォーターズ、クエンティン・タランティーノら——に影響を与え、さまざまな作品の中にエッセンスとして昇華されたのである。

しかし、本作にはまだ後日談がある。
2003年、“Zマン”のモデルとなった音楽プロデューサーのフィル・スペクターがビバリーヒルズの豪邸でグラマラスな女優ラナ・クラークソンを射殺するという映画のエンディング同様の事件が起こるのだ。
人生とは何が起こるかわからない。

「心を閉ざしちゃいけない」というメイヤーの言葉が胸に沁みてくる。

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